土木施工管理技士の試験って、最近変わったって聞いたんだけど、前と比べてどう変わったの?
こんな疑問に答えます。
令和3年度から変更となった土木施工管理技士の技術検定試験。
改正建設業法の「技術検定制度の見直し」によって、土木施工管理技術検定は新しい技術検定制度となりました。
土木施工管理技士検定制度の変更点は3つ。
- 試験区分の再編
- 1級技術検定の受験資格要件の見直し
- 検定基準(試験内容)の再編
この3つについて、内容をピックアップすると次の通りです。
- 学科試験・実地試験が廃止され、第一次検定・第二次検定に
- 学科試験の試験内容=第一次検定の試験内容ではなく、試験内容も変更となる
- 第一次検定合格で「技士補」となり、第二次検定合格で「施工管理技士」となる
- 一次検定の合格は無期限有効(従来の学科試験合格は翌年まで有効)
- 2級土木施工管理の第二次検定合格者は、実務経験の年数問わず1級の一次検定を受験できる(2級の第二次検定合格者は翌年の1級第一次検定を受験できる)
- 1級土木施工管理技士の第二次検定は従来通り一定期間の実務経験が必要
技術検定制度の見直しによって、これまで(令和2年度まで)とどう変わるのかについて、本記事で解説します。
従来(令和2年まで)と再編後(令和3年以降)の変更内容
従来(令和2年まで)と再編後(令和3年以降)の変更内容としては、新試験制度と技士補の新設があげられます。
新試験制度:「学科試験」「実地試験」から「第一次検定」「第二次検定」に名称が変更
従来の制度では、まず「学科試験」を受験し、合格すると「実地試験」を受験することができました。
その後、実地試験に合格して初めて「施工管理技士」の称号が与えられる形式でした。
令和3年度以降はその形式が見直され、改正後は「第一次検定」と「第二次検定」と名称が変更。
試験内容の変更も公表されています。
また、一次検定だけの合格でも「技士補」の称号を得ることができます。
試験基準の変更
従来の試験の基準と、再編後の試験基準の違いについて、次の図のようになっています。
技士補とは
再編後の試験制度から新設された「技士補」という称号。
「技士補」とは、監理技術者の専任緩和を目的とした称号です。
下の図のように、主任技術者用件を満たした1級土木施工管理技士補を「監理技術者補佐」として現場に専任で配置することができるようになりました。
これにより、監理技術者は2つまで現場を兼務できるようになりました。
受験資格(1級・2級土木施工管理)
次は、1級と2級土木施工管理の受験資格についてです。
従来と比較して、第一次検定だけはすぐに受験が可能になっているなど、変更点があります。
1級土木施工管理技士「第一次検定」の受験資格
以下、全国建設研修センターより引用になりますが、1級土木施工管理技士「第一次検定」の受験資格は次の表の通りです。
指定学科についてはこちらを参照ください。
2級土木施工管理技士(技士補ではない)は、1級の第一次検定を無条件で受験が可能です。(下表の区分「二」より)
区分 | 学歴又は資格 | 土木施工に関する実務経験年数 | ||
指定学科 | 指定学科以外 | |||
イ | 大学卒業者 | 卒業後3年以上 | 卒業後4年6月以上 | |
専門学校卒業者(「高度専門士」に限る) | ||||
短期大学卒業者 | 卒業後5年以上 | 卒業後7年6月以上 | ||
高等専門学校卒業者 | ||||
専門学校卒業者(「専門士」に限る) | ||||
高等学校・中等教育学校卒業者 | 卒業後10年以上 | 卒業後11年6月以上 | ||
専門学校卒業者(「高度専門士」「専門士」を除く) | ||||
その他の者 | 15年以上 | |||
ロ | 高等学校卒業者 | 卒業後8年以上の実務経験(その実務経験に指導監督的実務経験を含み、かつ、5年以上の実務経験の後専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む) | ||
中等教育学校卒業者 | ||||
専門学校卒業者(「高度専門士「専門士」を除く」) | ||||
ハ | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 | 高等学校卒業者 | 卒業後8年以上 | 卒業後9年6月以上 |
中等教育学校卒業者 | ||||
専門学校卒業者(「高度専門士」「専門士」を除く) | ||||
その他の者 | 13年以上 | |||
ニ | 2級合格者 |
1級土木施工管理技士「第二次検定」の受験資格
1級土木施工管理技士「第一次検定」に合格し、1級の「技士補」の称号を得ることができでも、第二次検定の受験には一定年数の実務経験が必要です。
現場で何が変わるのかというと、2つの工事を受注したいが監理技術者として専任となる1級土木施工管理技士は1人しかいない場合。
従来は監理技術者が1人しかいないので1つの工事しか受注できませんでした。
今後は、1級には実務経験年数が足りない現場監督でも、1級の技士補を持っている人が2人いれば、監理技術者を2つの工事「兼任」で受注が可能になりました。
以下、全国建設研修センターより引用
区分 | 学歴又は資格 | 土木施工に関する実務経験年数 | ||
指定学科 | 指定学科以外 | |||
ⅰ | 2級合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の指導監督的実務経験及び専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む3年以上 | ||
2級合格後5年以上の者 | 合格後5年以上 | |||
2級合格後5年未満の者 | 高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専門学校卒業者(「高度専門士」「専門士」を除く) | 卒業後9年以上 | 卒業後10年6月以上 | |
その他の者 | 14年以上 | |||
ⅱ | 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者 |
2級合格者 | 合格後3年以上の者 | 合格後1年以上の専任の主任技術者実務経験を含む3年以上 |
合格後3年未満の者 | 短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) | 卒業後7年以上 | ||
高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専門学校卒業者(「高度専門士」「専門士」を除く) | 卒業後7年以上 | 卒業後8年6月以上 | ||
その他の者 | 12年以上 |
2級土木施工管理技士「第一次検定」の受験資格
17歳以上であれば、2級土木施工管理技士「第一次検定」は実務経験に関係なく受験可能です。
以下、全国建設研修センターより引用
令和3年度の末日における年齢が17歳以上の者(平成17年4月1日以前に生まれた者)
2級土木施工管理技士「第二次検定」の受験資格
2級土木施工管理技士「第一次検定」に合格し、2級の「技士補」の称号を得ることができでも、第二次検定の受験には一定年数の実務経験が必要です。
指定学科についてはこちらを参照ください。
学歴 | 土木施工に関する実務経験年数 | |
指定学科 | 指定学科以外 | |
大学卒業者 専門学校卒業者(「高度専門士」に限る) | 卒業後1年以上 | 卒業後1年6月以上 |
短期大学卒業者 高等専門学校卒業者 専門学校卒業者(「専門士」に限る) | 卒業後2年以上 | 卒業後3年以上 |
高等学校卒業者 中等教育学校卒業者 専門学校卒業者(「高度専門士「専門士」を除く」) | 卒業後3年以上 | 卒業後4年6月以上 |
その他の者 | 8年以上 |
令和3年度技術検定の合格基準について
合格基準については、従来と変わらず得点が60%と公表されています。
以下、全国建設研修センターより引用
土木施工管理技士 | ||
1級 | 第一次検定(全体) | 得点が60% |
第一次検定(施工管理法(応用能力) | 得点が60% | |
第二次検定 | 得点が60% | |
2級 | 第一次検定 | 得点が60% |
第二次検定 | 得点が60% |
土木施工管理技術検定試験の結果と合格率
国土交通省の発表によると、令和3年度の1級土木施工管理技術検定「第一次検定試験」の合格者は次の表の通りでした。
受検種目 | 1級土木施工管理「第一次検定」 |
試 験 日 | 令和3年7月4日(日) |
試験会場 | 全国13地区(38会場) |
受検者数 | 37,726人 |
合 格 者 数 | 22,851人 |
合 格 率 | 60.60% |
合格基準 | 65問中39問以上正解 |
(応用能力:15問中9問以上正解) |
次に、総合資格学院の公表より、「1級土木施工管理技士」試験の合格率です。
学科 | 実地 | |||||
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
平成19年 | 42,234 | 21,458 | 50.80% | 35,161 | 12,899 | 36.70% |
平成20年 | 40,556 | 28,603 | 70.50% | 37,593 | 9,743 | 25.90% |
平成21年 | 34,900 | 17,762 | 50.90% | 34,205 | 6,544 | 19.10% |
平成22年 | 39,733 | 21,066 | 53.00% | 30,864 | 5,720 | 18.50% |
平成23年 | 34,241 | 13,959 | 40.80% | 26,617 | 5,544 | 20.80% |
平成24年 | 37,703 | 20,674 | 54.80% | 27,675 | 9,585 | 34.60% |
平成25年 | 32,639 | 19,568 | 60.00% | 29,182 | 10,299 | 35.30% |
平成26年 | 33,130 | 19,389 | 58.50% | 28,010 | 11,064 | 39.50% |
平成27年 | 35,810 | 19,551 | 54.60% | 27,547 | 10,266 | 37.30% |
平成28年 | 35,340 | 19,454 | 55.00% | 27,846 | 10,219 | 36.70% |
平成29年 | 34,629 | 22,930 | 66.20% | 31,414 | 9,424 | 30.00% |
平成30年 | 28,512 | 16,117 | 56.50% | 27,581 | 9,521 | 34.50% |
令和元年 | 33,036 | 18,076 | 54.70% | 24,688 | 11,190 | 45.30% |
令和2年 | 29,745 | 17,885 | 60.10% | 24,204 | 7,499 | 31.00% |
令和3年 | 37,726 | 22,851 | 60.60% | – | – | – |
こうやって年度ごとに比較してみると、再編後である令和3年度の合格率は例年とほぼ変わらずですね。
さらに同じく、総合資格学院の公表より、「2級土木施工管理技士」試験の合格率です。
学科 | 実地 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
平成20年 | 29,962 | 11,881 | 39.7% | 32,419 | 8,609 | 26.6% |
平成21年 | 29,948 | 17,662 | 59.0% | 31,467 | 6,767 | 21.5% |
平成22年 | 28,992 | 13,022 | 44.9% | 33,955 | 7,831 | 23.1% |
平成23年 | 28,105 | 11,362 | 40.4% | 29,150 | 6,513 | 22.3% |
平成24年 | 28,939 | 15,399 | 53.2% | 28,085 | 6,725 | 23.9% |
平成25年 | 28,660 | 15,741 | 54.9% | 30,044 | 12,016 | 40.0% |
平成26年 | 29,749 | 15,885 | 53.4% | 28,480 | 9,554 | 33.5% |
平成27年 | 33,383 | 22,198 | 66.5% | 31,792 | 11,336 | 35.7% |
平成28年 | 33,992 | 16,422 | 48.3% | 34,400 | 10,273 | 29.9% |
平成29年 第1回学科のみ試験 (10/22実施) | 7,618 | 4,398 | 57.7% | — | — | — |
平成29年 学科(注:1)・実地試験 (10/22実施) | 29,644 | 21,239 | 71.6% | 34,365 | 11,782 | 34.3% |
平成29年 第2回学科のみ試験 (H30 2/25実施) | 4,770 | 2,788 | 58.4% | — | — | — |
平成30年 学科試験 (前期) (6/3実施) | 7,747 | 3,894 | 50.3% | — | — | — |
平成30年 学科試験 (後期) (10/28実施) | 7,990 | 4,695 | 58.8% | — | — | — |
平成30年 学科(注:2)・実地試験 (10/28実施) | 19,365 | 12,274 | 63.4% | 33,399 | 11,698 | 35.0% |
令和元年 学科試験 (前期) (6/2実施) | 12,156 | 7,528 | 61.9% | — | — | — |
令和元年 学科試験 (後期) (10/27実施) | 8,114 | 4,606 | 56.6% | — | — | — |
令和元年 学科(注:2)・実地試験 (10/27実施) | 18,825 | 12,625 | 67.1% | 31,729 | 12,611 | 39.7% |
令和2年 学科試験 (前期) | 中止 | 中止 | 中止 | — | — | — |
令和2年 学科試験 (後期) (10/25実施) | 13,214 | 8,858 | 67.0% | — | — | — |
令和2年 学科(注:2)・実地試験 (10/25実施) | 19,968 | 14,488 | 72.6% | 30,437 | 12,852 | 42.2% |
令和3年 第一次検定 (前期) | 14,557 | 10,229 | 70.3% | — | — | — |
まとめ
建設業法の改正で「技士補」の称号が新設されたことにより、
「主任技術者の資格を有するもの(2級施工管理技士など)+1級技士補(1級一次検定合格者)」
などを要件として、監理技術者の「補佐」ができるようになりました。
この補佐を配置することで、監理技術者は特例監理技術者(兼務が認められる監理技術者)として、一定条件を満たした2つの現場を兼任することが可能となり、技術者の不足を補うことが期待されています。
1級の第一次検定に合格した技士補のうち、主任技術者の資格を有する者は、監理技術者補佐として早期に責任のある立場で現場の施工管理に携わることができるようになりました。
「早期に責任のある立場」ということで、人によっては若いうちに大きなプレッシャーを背負うことになると重圧を感じるかもしれません。
僕自身、2級土木施工管理技士の資格を取得して、その年に国交省の工事で現場代理人を任されたときは、プレッシャーのせいか腹痛になってしまったことがあるよ…。
そんな時こそ、上司になんでも相談したり、どんなことでもいいので、とにかくコミュニケーションをとってみてください。
経験が浅いうちは、わからなくて当たり前ってくらいに考えて、周りの人に頼ろう!自分で何でも抱えないようにね!
上司なら普通、あなたがプレッシャーや重圧で悩んでいる状況で助けてくれますよ。
僕も会社の上司に何度も助けてもらいましたから。
自分自身で解決してみせようとチャレンジするのも良いことですが、現場監督とプライベートを両方充実した生活を送りたいなら、人に頼ることも必要です。
頼れる上司を見つけて参考にしたり、仕事のやり方をマネしたりして、より効率よく・生産性を高めることを意識すると、日々の施工管理が今より確実に楽になりますよ。
施工管理の仕事についてはこちらで詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
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