建設業って高齢化が深刻っていうけど、現場では何か対策とかするべきなの?具体的に何歳から高齢者になるのかもよくわからないし、高齢者に向けた安全対策が知りたいな。
こんな疑問に答えます。
建設業界は高齢化が深刻というのは本当で、令和3年12月27日の国土交通省報道発表資料によれば、建設業の技能者の約3分の1が55歳以上。
出典:国土交通省「建設業の人材確保・育成に向けた取組を進めていきます~国土交通省・厚生労働省の令和4年度予算案の概要~」令和3年12月27日
労働安全衛生法では、高年齢労働者が何歳からなのかという定義についての定めはありません。
しかし、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、高年齢者と中高年齢者の定義について以下の通り定められています。
- 高年齢者の年齢を55歳以上
- 中高年齢者の年齢を45歳以上
55歳以上が高年齢労働者ということは、建設現場で働く人の約3分の1が高年齢労働者ということになります。
データから見ても、建設業界の高齢化は深刻なんだね…。でも、知識・経験がある分、危険予知ができるから事故は少ないんじゃないの?
東京労働局のデータによれば、労働災害の発生件数を年齢別でみると30歳代が最も低く、その後は年齢とともに増加する傾向となっています。
30歳代と比較すると、60歳代では約3倍の高い数値で労働災害が起きていたというデータとなっています。
高齢労働者の安全と健康確保のためにも安全衛生教育は必要であり、長年培ってきた豊富な知識・経験も、技術継承のために必要な財産です。
本記事では、高年齢労働者の安全衛生のポイントについて、チェックリストも含めて解説します。
年齢別労働災害の統計データでは60代の労働災害は30代の3倍以上
東京労働局のデータによれば、労働災害の発生件数を年齢別でみると30歳代が最も低く、その後は年齢とともに増加する傾向となっています。
30歳代と比較すると、60歳代では約3倍の高い数値で労働災害が起きていたというデータとなっています。
年代別の労働災害年千人率
高齢労働者の安全と健康確保のためにも安全衛生教育は必要であり、長年培ってきた豊富な知識・経験も、技術継承のために必要な財産です。
高年齢労働者は、若年労働者に比べて、被災した場合にその程度が重くなるという傾向があります。
これらの背景には、加齢とともに筋力、反応感覚や平衡機能、視聴覚機能、記憶力等の心身機能の低下があげられます。
一方、高年齢者の一般的な特徴として、過去に身につけた知識、経験等による推理能力があり、 判断能力や精神的安定性を増すといわれています。
つまり、高年齢労働者に対する安全衛生教育においては、加齢に伴う心身機能の変化とともに十分時間をかけて作業に必要な知識、技能を付与することが大切です。
特に運転、 操作等の実技教育においては、若年労働者に比べて習得に時間を要することに配慮することが大切です。
この他、重量物を運搬する場合や高所作業の場合の作業方法、 安全対策についても具体的に教えておくことが必要です。
高年齢労働者に対する安全対策を徹底するためには、作業者に対する安全衛生教育の他、設備面で以下の点人力による運搬、取扱い作業、機械化の促進、昇降設備、作業床等使用する設備の安全化、工具の軽量化など設備面からの改善もポイントになります。
「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」の策定について(厚生労働省)の解説
厚生労働省より、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」の策定についての資料が公表されています。
上記の内容の要点をまとめると、以下の通りです。
- 労働災害による休業4日以上の死傷者数のうち、60 歳以上の労働者の占める割合が増加傾向
- 労働者千人当たりの労働災害件数(千人率)をみると、男女ともに最小となる 25~29 歳と比べ、65~69 歳では男性で 2.0 倍
- 高年齢労働者の労働災害防止を目的として、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」(通称:エイジフレンドリーガイドライン)を策定
- 高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりや労働災害の予防的観点からの高年齢労働者の健康づくりを推進するために、高年齢労働者を使用する又は使用しようとする事業者(以下「事業者」という。)及び労働者に取組が求められる事項を具体的に示し、高年齢労働者の労働災害を防止することが目的。
高年齢・中高年齢者は何歳から?
労働安全衛生法では、中高年齢者が何歳からなのかという定義についての定めはありません。
しかし、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、高年齢者の年齢を55歳以上、中高年齢者の年齢を45歳以上と定めています。
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則
(高年齢者の年齢) 第1条
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和四十六年法律第六十八号。以下「法」という。)第二条第一項の厚生労働省令で定める年齢は、五十五歳とする。
(中高年齢者の年齢) 第2条
法第二条第二項第一号の厚生労働省令で定める年齢は、四十五歳とする。
(出典:E-GOV法令検索)
労働災害は中高年労働者等に発生の危険が多くなります。
中高年労働者の労働災害の防止は従来から取り組まれている設備面の対策だけではなく、加齢による身体機能の変化に対応した対策が必要です。
エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)パンフレットの解説
高年齢労働者の安全衛生対策について、厚生労働省からはエイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)のパンフレットが配布されています。
パンフレット『エイジフレンドリーガイドライン(高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン)』
高年齢者雇用状況等報告の記入方法について
高年齢者雇用状況等報告書及び記入要領等については、厚生労働省より記入様式等がはいふされています。
高年齢者雇用状況等報告書の記入方法については、同じく厚生労働省よりYOUTUBE動画があるので、参考にしてくださいね。
中高年齢者への配慮に関する法令は労働安全衛生法第62条に記載
高齢労働者への労働環境については安衛法に定めがあり、簡単にいえば『中高年労働者等が働くにあたり、労働災害防止のために配慮してくださいね』ということになります。
労働安全衛生法第62条にて定められています。
本条は事業者に対して、これらの者の配置に際しては労働災害防止の観点から、その心身に見合った適正な職場配置をするよう要請しているものです。
労働安全衛生法
(中高年齢者等についての配慮) 第62条
事業者は、中高年齢者その他労働災害の防止上その就業に当たつて特に配慮を必要とする者については、これらの者の心身の条件に応じて適正な配置を行なうように努めなければならない。
(出典:E-GOV法令検索)
高年齢労働者は経験がモノを言う建設業界にとって必要不可欠な存在
高年齢労働者は現場の作業環境に配慮が必要なものの、長年培ってきた知識・経験は若い世代にとって貴重な存在です。
高年齢労働者が建設現場に与えるメリットは以下の通り。
- 従業員のスキル向上や人材育成につながる
- 労働力不足の解消となる
- 知識・経験・人脈を活用できる
- 様々な視点の価値観を取り入れることができる
現場で困った時の相談役になってくれるし、過去にいろんな下請さんと関わってきたから人脈も凄いよね。
【チェックリスト】現場が高年齢労働者に配慮した環境か確認する方法
自分の現場が高齢労働者に対してどれくらい配慮できてるか、確認する方法はないの?
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署より、『高齢労働者に配慮した職場改善マニュアル』が配布されています。
そのマニュアルの中に、『高年齢労働者に配慮した作業負担管理状況チェックリスト』があるので、参考にしてくださいね。
高齢労働者に配慮した職場改善マニュアル – 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
高年齢労働者の安全衛生に関する資料・リーフレット等
高年齢労働者の安全衛生に関する資料やリーフレットです。
現場での安全衛生教育にぜひ、ご活用ください。
【厚生労働省】パンフレット『高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン』
【中央労働災害防止協会】高年齢労働者の活躍促進のための安全衛生対策-先進企業の取組事例集
【中央労働災害防止協会】高年齢労働者の活躍促進のための安全衛生対策-先進企業の取組事例集
教育動画『現場の戦力 高年齢作業員を災害から守る』労働調査会出版局
労働調査会出版局より、『現場の戦力 高年齢作業員を災害から守る』(YOUTUBE)
教育動画『高年齢者の労働災害防止対策』熊本労働局
熊本労働局より、『高年齢者の労働災害防止対策』(YOUTUBE)
まとめ
労働安全衛生法では、高年齢労働者が何歳からなのかという定義についての定めはありません。
しかし、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」では、高年齢者と中高年齢者の定義について以下の通り定められています。
- 高年齢者の年齢を55歳以上
- 中高年齢者の年齢を45歳以上
55歳以上が高年齢労働者ということは、建設現場で働く人の約3分の1が高年齢労働者ということになります。
高齢労働者への労働環境については安衛法に定めがあり、簡単にいえば『中高年労働者等が働くにあたり、労働災害防止のために配慮してくださいね』ということになります。
労働安全衛生法第62条にて定められています。
高年齢労働者は現場の作業環境に配慮が必要なものの、長年培ってきた知識・経験は若い世代にとって貴重な存在です。
高年齢労働者が建設現場に与えるメリットは以下の通り。
- 従業員のスキル向上や人材育成につながる
- 労働力不足の解消となる
- 知識・経験・人脈を活用できる
- 様々な視点の価値観を取り入れることができる
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署より、『高齢労働者に配慮した職場改善マニュアル』が配布されています。
そのマニュアルの中に、『高年齢労働者に配慮した作業負担管理状況チェックリスト』があるので、参考にしてくださいね。
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