盛土工事の試験施工(試験盛土)について図解と写真で詳しく解説
築堤盛土の試験施工をやるんだけど、やり方とか、何に気をつけてやればいいかな?
こんな疑問に答えます。
品質の良い盛土工事をするために欠かせない試験施工。
河川堤防の築堤盛土では、手抜きは全体に許されません。
本記事では、国交省工事で築堤盛土を含む工事を9件経験した当サイト運営者が、築堤盛土を品質よく施工するための方法について解説します。
- 河川土工における築堤盛土でやるべき施工管理がわかる
- 施工計画を作るときに参考文献から調べる手間が省ける(参考文献の1つ、河川土工マニュアルは全587ページ)
- 盛土の試験施工の段取りがわかる
- 短時間で築堤盛土が理解でき、仕事時間を短縮できる
当サイト『ゲンプラ』の運営者:ランメイシ
現場監督と家庭(プライベート)の両立を応援するために、土木工事の施工管理をやっている現役の現場監督(歴16年)が当サイトを運営。施工管理業務の悩みに全力でサポートします!ご安全に!
保有資格:1級土木施工管理技士、河川点検士
主な工事経験:河川の築堤・護岸工事、道路工事、橋梁下部工事
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試験施工(試験盛土)とは
試験施工(試験盛土)とは、本施工を始める前に行う試験のことです。
試験施工って何のためにやるの?
試験施工では、実際の施工方法で以下の4要素と締固め度との関係を確かめます。
- 締固め機械
- 一層のまき出し厚
- 締固め回数
- 施工中の土の含水比
築堤盛土の品質で重要なことは2つで、試験施工はこの2つを本施工でクリアするための準備です。
- 材料が均質に締固められていること
- 洪水および降雨による浸透水に対して安定であること
試験施工を行うときの含水比は、自然含水比か本施工の時期に近い条件で行うのが良い
河川土工マニュアルより、試験施工を行う際に土砂のは含水比は自然含水比が望ましいとされています。
ただし、施工する時期の天候を考慮して試験施工を行った方が、品質管理の確実性が増します。
河川の工事は出水期の関係で6月~9月に工事ができない等、施工時期の制約があります。
そのため、天候の悪い日が多い冬期に盛土を施工することになりがちです。
冬期は雨で盛土材の土砂が水を含み、なかなか水分が落ちない(含水比が下がらない)ため、試験施工は自然含水比より高めの状態で行う方が確実です。
試験施工での品質管理は『土質試験』と『現場測定』
試験施工では、土質試験と現場測定を行います。
下の写真が土質試験で、現場密度試験を行っている状況です。
下の写真が現場測定で、盛土材の敷き均した後と、転圧した後の沈下量を測定している状況です。
土質試験は盛土材の『締固め管理の基準値』を知るために行う
材料の特性と締固め管理の基準値を知るために、以下の土質試験(室内試験)を行います。
- 土粒子の密度試験
- 含水量試験
- 礫のかさ比重および礫の吸水量試験
- 粒度試験
- 液性限界・塑性限界試験
- 締固め試験
- コーン貫入試験など
現場測定は盛土1層ごとの『敷き均し厚さ』と締固め機械の機種・規格ごとの『転圧回数』を知るために行う
盛土材の『敷き均し』と『転圧』を行う回数が増えるほど、工程は長くなります。
締固め機械による転圧で30cmで仕上がる敷き均し厚さを把握することで、結果的に効率の良い工程管理にもつながります。
現場測定で何を調べるかというと、以下の2つです。
- 盛土材を敷き均した後と、締固め機械で転圧した後で、盛土がどれだけ『沈下』するか
- 締固め機械による転圧で、『盛土の沈下が収束』するのは何回転圧した時か
- 締固め度(現場密度)が品質規格値の『最大乾燥密度の90%以上』を確保できる、締固め機械ごとの転圧回数は何回か
盛土材を敷き均した後と、締固め機械で転圧した後で盛土がどれだけ沈下したかを調べます。
築堤盛土と路体盛土の場合、1層ごとの仕上がり厚さは30cm以下と定められています。
盛土材を30cmの厚さで敷き均せば、転圧によって3~5cmは沈下するので仕上がり厚さ30cm以下を確
実にクリアできます。
でも、盛土材の敷き均しを30cmジャストでやると効率が悪いんだ。
例えば、高さ6mの盛土をする場合、
6m ÷ 0.3m = 20層で盛土が完成
30cmで敷き均して転圧によって仕上がり厚さが27cmになる場合、
6m ÷ 0.27m = 22.222 =23層で盛土が完成
たった3cmの違いでも、回数を重ねると盛土の層はこんなに増えるんだね。
ちなみに、現場密度試験を突砂法や砂置換法ではなく、RI計器で行う場合は1層ごとにRI計器で現場密度を測定する必要があるので、盛土の層が増えるほど手間(試験回数)も増えます。
ブルドーザーやバックホウが盛土材の上に乗って敷均す場合、僕の経験上、締め固めによる沈下は3~5cmだね。
重機が盛土材の上に乗って敷均す状況は、以下の写真のようなイメージです。
敷き均す際に、ブルドーザーやバックホウなどの重機である程度、締め固められます。
重機のキャタピラで転圧することから「キャタ転」と呼ばれます。
効率良く盛土工事を進めるには、試験施工で転圧後30cmに仕上がる敷き均し厚さを知る必要があります。
きっちり30cmずつ盛土することで『敷き均し』と『転圧』を行う回数が最小になり、品質をしつつ、工程管理も良くできた施工につながります。
現場測定の方法は、『丁張からの下がり』と『レベル測定』のどちらかで行う
盛土材を敷き均す前に、試験施工ヤードの地面の高さを測っておきます。
丁張に張った水糸から地面までの高さを測るか、レベルで基準高管理するかの2つから測定方法を選びます。
丁張設置の手間を考えれば、レベルで測った方が楽だよ。
丁張を設置して管理する場合のメリットは、写真で高さ関係を確認できることです。
現場での測定項目と、その測定頻度は以下の表(河川土工マニュアルより引用)を目安にしてください。
測定項目 | 測定時 |
現場密度 | まき出し後、転圧中に数回(たとえば締固め回数2、 4、6、8、10回の時)、転圧終了後 |
含水比 | まき出し後と転圧終了後(転圧中に測定する) |
表面沈下量 | 転圧終了後には必ず測定 できれば現場密度と同頻度 |
原位置強度 | 現場密度と同頻度 |
上の表は河川土工マニュアルに書いてある通りだけど、締固め回数が2回・4回・6回・8回・10回と5種類も試験をやるのは大変だから、以下を参考にしてね。
当サイト運営者もこれまで数十回と試験施工を行ってきましたが、レキ質土の場合、締固め回数(転圧回数)は4回・6回・8回の3種類で十分かと。
理由は以下の通りです。
- 2回転圧だと締固め度が90%以上を確保できたとしても、盛土の沈下が収束しないことが多く、工事完成後に沈下の可能性がある
- 10回転圧だと本施工で締固め作業に時間がかかるのと、過転圧になり路肩側に土砂が寄ってしまう可能性がある
レキ質土の場合、締固め機械の機種・規格にもよるけど、4回~6回の転圧で締固めによる盛土の沈下も収束する傾向にあるよ。
下の図は、サイト運営者が過去の工事で築堤盛土の試験施工を4tコンバインドローラーで行った結果です。
上の図の『転圧回数と沈下量の関係図』と『転圧回数と締固め度の関係図』から、以下のことがわかります。
- 締固め度(現場密度)は4回転圧で品質管理の規格値(最大乾燥密度の90%以上)を満足
- 締固め度の増加量は6~8回転圧で収束傾向
- 沈下量は3レーンの6~8回転圧に対して沈下が収束傾向
- 6回以上の転圧効果は、ほぼ得られないと判断される
土質によって結果は変わるから、参考程度にしてね。
試験盛土のイメージ図は、河川土工マニュアルに記されている図を引用します。
試験施工の手順(試験盛土の手順)
試験施工に必要なヤードは、1つの締固め機械につき10m×8m程度で、土砂は約24m3使用します。
締固め機械によって幅が違うので、下記を参考にして調整すると良いですよ。
- 10t級タイヤローラー 約2.1m
- 10t級振動ローラー 約2.3m
- 4t級コンバインドローラー 約1.3m
- ハンドガイドローラー 約0.6m
当サイト運営者が実際の工事で行っている手順です。盛土の規模によってはもっとレーンを増やしたり、同じ盛土材で1層盛土した後に2層目で試験施工を行ったりもしますが、基本的には本記事の手順を参考にしてもらえれば十分かと。
基面整正・転圧
試験施工を行う前に、土砂を敷き均す地盤を平坦に均し(基面整正)、締固め機械によって締固めます(転圧)。
もともとの地面(現況地盤)を基面整正することで、均一な厚さで盛土材を敷き均すことができ、転圧してもともとの地面が沈下しないようにすることで、盛土材の『厚さ』と『沈下量』を正確に管理できます。
基面整正・転圧後の試験施工ヤードは、以下の写真のようになります。
レベル測定 or 丁張からの下がり測定
盛土材を敷き均す前に、試験施工ヤードの地面の高さを測っておきます。
丁張に張った水糸から地面までの高さを測るか、レベルで基準高管理するかの2つから測定方法を選びます。
丁張設置の手間を考えれば、レベルで測った方が楽だよ。
丁張を設置して管理する場合のメリットは、写真で高さ関係を確認できることです。
どちらの方法でも、ラッカースプレーなどで測定箇所がズレないようにするのがポイントです。
盛土材の敷き均し(まき出し)
盛土材の敷き均し作業を『まき出し』とも呼びますが、河川土工マニュアルでも『敷き均し』と『まき出し』両方の言葉が使われています。
本記事では、敷き均しと呼び方を統一しています。
盛土材を敷き均す際の注意点は、本施工で使う機種・規格の建設機械を使うことです。
本施工で敷き均しに0.7m3級バックホウを使うのに、0.45m3や1.2m3級などのバックホウやブルドーザーを使うと、試験の意味が無くなってしまいます。
敷き均し完了後にレベル測定もしくは丁張からの下がり測定
盛土材敷き均し前の測定と同様に、盛土材を30cm程度に敷き均したら、締固める前に盛土厚さを測定します。
締固め&1往復ごとにレベル測定もしくは丁張からの下がり測定
本施工で使用する転圧機械・機種で、締め固めを行います。
上の図の通り、転圧回数ごとにレーンを分けていますが、どのレーンでも1往復するごとに盛土の沈下量を測定します。
理由は、何回転圧した時に沈下が収束したかを知るためです。
現場密度試験の結果、締め固め土が90%以上になっていたとしても、沈下が収束していないと工事完成後に盛土が沈下する可能性があります。
現場密度試験
締め固め機械による盛土材の転圧が完了したら、各レーンで現場密度試験を行います。
試験方法は盛土材の最大粒径から『砂置換法』か『突砂法』を選択します。
土砂による盛土の場合、基本的に最大粒径は53mm以上なので突砂法になります。
(砂置換法は土羽土や再生砕石RC-40などの現場密度試験で使用)
まとめ
本記事では、河川土工施工時の「試験盛土」のやり方について解説しましまた。
あくまでも本記事のやり方は1例であり、このやり方だけが正解というわけではありません。
内容を参考にしつつ、自分なりに「こうやった方がもっと品質の良い盛土工事をできる!」という案が見つかったら、積極的に取り入れてみてくださいね!
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