建設業リスクアセスメントの必要性と記入例・評価方法を徹底解説!【KY・作業手順書向け】

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現場監督

危険予知活動とか作業手順書で、リスクアセスメントの書き方を協力業者から聞かれるんだ。仕事だから書かないといけなくて、説明して書いてもらうんだけど、リスクアセスメントってそんなに大事なの?

こんな疑問に答えます。

リスクアセスメントって、面倒とか、やり方がわからない、といった理由で嫌がる人が多いですよね。

でも、リスクアセスメントはコツさえ知ってしまえば簡単に行うことができます。

危険を洗い出しさえすれば、決まった評価方法から対策の優先度を導くことができるからです。

本記事では、建設業におけるリスクアセスメントの必要性や記入例について解説します。

ランメイシ

リスクアセスメントの結果から最低限、一番優先度の高い危険への対処は今日やる!というくらいで取り組むといいよ。

建設現場は、施工技術・工程等の多様化によって複雑化しています。

様々な機械設備・作業設備・原材料等が導入され、様々な作業方法作業手順等が採用されています。

このため、 建設現場で発生する労働災害、事故等の状態とその原因は多様化し、把握自体が難しくなっています。

このような建設現場の機械設備・作業設備等の不安全な状態、有害な状態又は作業手順の逸脱等による不安全行動や不衛生な行動。

これに起因して発生する様々な労働災害・事故等には、本来こうした不安全状態や不安全行動を引き起こす元となった予測される災害要因、予測される危険要因、又は有害な要因が存在しています。

建設現場における労働災害・事故等を防止し、安全衛生水準の確実な向上を図るためには、建設現場や作業に潜在するこれらの危険性又は有害性等を工事の計画段階及び作業開始前に事前に調査・評価して、除去・低減対策を実施することが重要です。

この記事を書いた人
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当サイト『ゲンプラ』の運営者:ランメイシ

現場監督と家庭(プライベート)の両立を応援するために、土木工事の施工管理をやっている現役の現場監督(歴16年)が当サイトを運営。施工管理業務の悩みに全力でサポートします!ご安全に!

保有資格:1級土木施工管理技士、河川点検士

主な工事経験:河川の築堤・護岸工事、道路工事、橋梁下部工事

プロフィール詳細/現場の事故がきっかけで最悪な状況になった時の体験談

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主な工事経験:河川の築堤・護岸工事、道路工事、橋梁下部工事

プロフィール詳細/現場の事故がきっかけで最悪な状況になった時の体験談

目次

リスクアセスメントとは

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リスクアセスメントとは

リスクアセスメントとは、現場の潜在的な危険性または有害性を見つけ出し、これを除去・低減するための手法です。

リスクアセスメントは次の流れに沿って進めます。

  1. 職場に潜在するあらゆる危険性又は有害性を特定する。
  2. の危険性又は有害性ごとに、既存の予防措置による災害防止効果を考慮のうえリスクを見積もる。
  3. 見積もりに基づきリスクを低減するための優先度を設定し、リスク低減措置の内容を検討する。
  4. 優先度に対応したリスク低減措置を実施する。
  5. リスクアセスメントの結果及び実施したリスク低減措置を記録して、災害防止のノウハウを蓄積し、次回のリスクアセスメントに利用する。

このような進め方により、系統的にリスクを見積る体制が事業者の責任の一環として確立し、その結果が反映され文章として記録され、さらに見直しを行えるようになります。

現在多くの事業場で職場に存在する危険性又は有害性を見つけだし、事前に安全衛生対策を立てるために、安全衛生診断、危険予知(KY)活動などが一般的に行われています。

これらの活動は広い意味ではリスクアセスメントの一つと言えますが、本来リスクアセスメントとは、これら現場での経験的な活動に対し、事業者責任の一環として確立し、体系的、理論的、計画的に進めることに特徴があります。

ランメイシ

作業の中で危険を可視化したうえで評価して、優先度を決めて対策する。こうすることで、事故のリスクが高いものから対策していけるのがポイントだね。

リスクアセスメントの実施は努力義務だが、化学物質の製造・取扱いを行う場合には義務となっている

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リスクアセスメントの実施は努力義務だが、化学物質の製造・取扱いを行う場合には義務となっている

リスクアセスメントの実施は努力義務(労働安全衛生法第28条)であり義務ではないため、現場でリスクアセスメントに取り組んでいなくても、罰則を科せられることはありません。

ただし、平成26年6月に労働安全衛生法が改正され、一定の危険有害性のある化学物質(640物質)については、業種、事業場規模に関わらず、その対象となる化学物質の製造・取扱いを行う場合にリスクアセスメントを実施することが義務づけられました。(平成28年6月1日施行)

建設業では、塗装作業、接着作業等において、対象となる化学物質を取扱うことがあります。

関連資料は以下を参照ください。

その際にリスクアセスメントの実施と、リスクレベルに応じた安全衛生対策を実施することが必要となります。

現場監督

努力義務だから、絶対にやる必要があるわけじゃないんだね。じゃあ一定の危険有害性のある化学物質以外はリスクアセスメントやらなくてもいいんじゃない?

ランメイシ

そういうワケにもいかないんだよね。

建設業は2次下請・3次下請と、重層請負構造に伴う混在作業になりやすい産業です。

現場監督による単独の安全管理では不十分なうえ、さらに工程や環境条件によりリスクが日々変化しやすいといった業種特有の状況があります。

ランメイシ

盛土や掘削、コンクリート工事で現場内は毎日、形を変えていくよね。だから、昨日の安全対策が今日も同じ対策で良いとは限らないよ。

このため建設現場では、元方事業者による統括安全衛生管理の中にもリスクアセスメントを位置付ける必要があります。

現場監督

毎日変わる現場の危険箇所を全部直してたら、次の日には危険箇所じゃなくなってた。時間の無駄になっちゃったよ。

ランメイシ

もしかしたら、その1日だけの危険箇所が原因で事故が起きてたかもしれないから、無駄にはならないはずだよ。

全ての危険を排除するのも、できれば良いことですが、人手不足かつ人件費も限られる建設現場です。

現場内の安全対策だけを行う現場監督なんていませんよね。

だからこそリスクアセスメントを行い、優先して対処すべき危険箇所や行動を判断した方が、結果的に効率化できます。

リスクアセスメントは、現場の潜在的な危険性又は有害性を見つけ出して除去、低減する方法です。

建設工事の計画段階や現場において、以下の5ステップを行うことで、現場における安全衛生対策の優先度の判定や自主的な安全衛生対策が期待できます。

  1. 職場に潜在するあらゆる危険性又は有害性を特定する。
  2. の危険性又は有害性ごとに、既存の予防措置による災害防止効果を考慮のうえリスクを見積もる。
  3. 見積もりに基づきリスクを低減するための優先度を設定し、リスク低減措置の内容を検討する。
  4. 優先度に対応したリスク低減措置を実施する。
  5. リスクアセスメントの結果及び実施したリスク低減措置を記録して、災害防止のノウハウを蓄積し、次回のリスクアセスメントに利用する。

危険予知活動(KY)・作業手順書に書く場合の記入例と評価のやり方

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危険予知活動(KY)・作業手順書に書く場合の記入例と評価のやり方

リスクアセスメントの記入例については、建設業関連団体より参考になるものが多く公開されていますので、当サイト運営者としても参考になった資料を紹介します。

建設業労働災害防止協会『リスクアセスメント建設業版マニュアルのあらまし』

2010年公開とやや古めですが、イラストや図・フローチャートを多く用いた資料で見やすいです。

建設業労働災害防止協会『リスクアセスメント建設業版マニュアルのあらまし』

厚生労働省『リスクアセスメント実施事例集』

厚生労働省からリスクアセスメント実施事例集が公開されているので、こちらも参考になりますよ。

中小建設業特別教育協会

リスクアセスメントの進め方、書き方、そして事例まで

危険性又は有害性等の調査項目

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危険性又は有害性等の調査項目

危険性又は有害性等の調査は、調査記録により、次の項目に対して実施することになります。

  • 毎日の機械設備や作業手順で予測される災害
  • 過去の労働災害、事故、ヒヤリハットの事例
  • 安全衛生パトロールで発見・指摘された事項
  • 元請から指導された事項
  • その他、施工に伴って発生する問題点


リスクアセスメントの5つのステップと各ステップの取組み

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リスクアセスメントの5つのステップと各ステップの取組み

リスクアセスメントとは、危険性又は有害性等の洗い出しから除去・低減対策の実施、内容の記録までの一連の体系をいい、 具体的には次のステップで実施します。

  1. 危険性又は有害性等の洗い出し (特定)
  2. 危険性又は有害性等の見積り
  3. 危険性又は有害性等の評価 (優先度の決定)
  4. 危険性又は有害性等の除去低減対策の検討と実施
  5. 実施内容の記録と見直し


① 危険性又は有害性等の洗い出し (特定)

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危険性又は有害性等の洗い出し (特定)

リスクアセスメントは、混在する現場や作業の危険性又は有害性等の洗い出し(特定)に始まります。

つまり、現場監督に求められるものは現場の作業や作業員の行動に潜む危険性又は有害性等を洗い出すことです。

危険性又は有害性等の洗い出し(特定)は次の手順で実施します。

  1. 毎日の機械設備や作業手順に基づく危険予知活動等から危険性又は有害性等を洗い出す。(特定する)
  2. 現場の安全衛生活動として取り組んでいるヒヤリハット運動、安全施工サイクル、安全衛生パトロール、災害・事故事例等の情報から危険性 又は有害性等を洗い出す。 (特定する)
  3. 現場管理者等が実施する安全施工サイクル、安全衛生パトロールなどから、危険性又は有害性等を洗い出す。 (特定する)
  4. 危険性又は有害性等の洗い出しは、細かいことにとらわれず、災害発生率の高い危険性又は有害性等を重点に洗い出す。(特定する)
  5. 洗い出した (特定した) 危険性又は有害性等について、「災害に至るまでの予測される経緯 (プロセス)」を明らかにする。


② 危険性又は有害性等の見積り

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危険性又は有害性等の見積り

洗い出した全ての危険性又は有害性等について、見積りを行います。

危険性又は有害性等の見積りは、災害発生の可能性と災害の重大性から危険性又は有害性等の大小を客観的に把握することです。

災害発生の可能性とは、その災害発生の度合いを表します。

  • 【1】ほとんど起こらない (1~3年に1回)
  • 【2】たまに起こる (1年~6ヶ月に1回)
  • 【3】かなり起こる (1ヶ月に1回)

災害の重大性は、以下のようにその災害の受傷程度(重篤度)を表します。

  • 【1】軽微 (不休災害)
  • 【2】重大 (休業災害)
  • 【3】極めて重大(死亡・障害)

③ 危険性又は有害性等を評価 (優先度の決定)し、危険度に応じて対策を実施する

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危険性又は有害性等を評価 (優先度の決定)し、危険度に応じて対策を実施する

潜在する危険性又は有害性等を体系的に事前評価し、危険度(リスクレベル) に応じて除去・低減対策を立て実施します。

評価の方法は、災害の発生の可能性 (度合)と災害の重大性(重篤度) の2つの要素を組み合わせて危険性又は有害性等を評価し優先度を決定します。

危険性又は有害性等の評価結果に基づいて、危険度に応じて対策を実施します。

可能性危険度評価優先度
【3】
かなり起きる
【3】
極めて大きい
【6】
可能性3+危険度3
最優先
即座に対策が必要
【3】
かなり起きる
【2】
大きい
【5】
可能性3+危険度2
優先
根本的な対策が必要
【2】
たまに起きる
【3】
極めて大きい
【5】
可能性2+危険度3
優先
根本的な対策が必要
【2】
たまに起きる
【2】
大きい
【4】
可能性2+危険度2
普通
何らかの対策が必要
【2】
たまに起きる
【1】
軽微
【3】
可能性2+危険度1
様子見
現時点で対策不要
【1】
ほとんど起きない
【2】
大きい
【3】
可能性1+危険度2
様子見
現時点で対策不要
【1】
ほとんど起きない
【1】
軽微
【2】
可能性1+危険度1
対策不要

④ 危険性又は有害性等の除去・低減対策の検討と実施

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危険性又は有害性等の除去・低減対策の検討と実施

危険性又は有害性等の評価及び判定の結果、その除去低減が必要とされる危険度の高いものに対して、対策を検討します。

除去・低減対策を検討する場合、作業手順、機械・工具等による作業方法の改善はもとより、設備による安全の確保等も含め総合的に判断する必要があります。

しかし、危険性の除去・低減対策を講じても危険度が現時点では、特に対策の必要がない場合に比べて、依然として高い危険性又は有害性等が残留する場合。

この場合は、安全衛生標識、保護具の着用、作業指示や監督等、管理的な手段で除去・低減対策をとらなければなりません。

⑤ 実施内容の記録と見直し

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実施内容の記録と見直し

リスクアセスメントに関する記録は分かりやすく、理解しやすいものとし、常に誰でもが閲覧可能にして、次回の危険性又は有害性等の除去 低減対策に反映させなければなりません。

そのためには、全ての記録を保管することが重要です。

また、リスクアセスメントの実施結果が適切であったかどうか見直し、次の計画の作成に役立てることが重要です。

まとめ

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まとめ

リスクアセスメントとは、現場の潜在的な危険性または有害性を見つけ出し、これを除去・低減するための手法です。

リスクアセスメントは次の流れに沿って進めます。

  1. 職場に潜在するあらゆる危険性又は有害性を特定する。
  2. の危険性又は有害性ごとに、既存の予防措置による災害防止効果を考慮のうえリスクを見積もる。
  3. 見積もりに基づきリスクを低減するための優先度を設定し、リスク低減措置の内容を検討する。
  4. 優先度に対応したリスク低減措置を実施する。
  5. リスクアセスメントの結果及び実施したリスク低減措置を記録して、災害防止のノウハウを蓄積し、次回のリスクアセスメントに利用する。


リスクアセスメントの実施は努力義務(労働安全衛生法第28条)であり義務ではないため、現場でリスクアセスメントに取り組んでいなくても、罰則を科せられることはありません。

ただし、平成26年6月に労働安全衛生法が改正され、一定の危険有害性のある化学物質(640物質)については、業種、事業場規模に関わらず、その対象となる化学物質の製造・取扱いを行う場合にリスクアセスメントを実施することが義務づけられました。(平成28年6月1日施行)

建設業では、塗装作業、接着作業等において、対象となる化学物質を取扱うことがあります。

リスクアセスメントの行い方は、潜在する危険性又は有害性等を体系的に事前評価し、危険度(リスクレベル) に応じて除去・低減対策を立てて実施します。

評価の方法は、災害の発生の可能性 (度合)と災害の重大性(重篤度) の2つの要素を組み合わせて危険性又は有害性等を評価し優先度を決定します。

危険性又は有害性等の評価結果に基づいて、危険度に応じて対策を実施します。

可能性危険度評価優先度
【3】
かなり起きる
【3】
極めて大きい
【6】
可能性3+危険度3
最優先
即座に対策が必要
【3】
かなり起きる
【2】
大きい
【5】
可能性3+危険度2
優先
根本的な対策が必要
【2】
たまに起きる
【3】
極めて大きい
【5】
可能性2+危険度3
優先
根本的な対策が必要
【2】
たまに起きる
【2】
大きい
【4】
可能性2+危険度2
普通
何らかの対策が必要
【2】
たまに起きる
【1】
軽微
【3】
可能性2+危険度1
様子見
現時点で対策不要
【1】
ほとんど起きない
【2】
大きい
【3】
可能性1+危険度2
様子見
現時点で対策不要
【1】
ほとんど起きない
【1】
軽微
【2】
可能性1+危険度1
対策不要

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