【土木工事】築堤盛土の施工管理!品質管理基準をクリアするための方法を土木施工管理16年のプロが解説
公共工事で河川の工事をするんだけど、築堤盛土ってどんな施工管理をやればいいのかな?品質の良い盛土のためには、どんな管理をやればいいの?
こんな疑問に答えます。
盛土工事って、単に土砂を敷き均して、締め固めて終わり…ってワケにはいきません。
盛土工事の施工には、以下の単語が使われますが、「それって何のこと?」って聞かれたら、説明できますか?
- 盛土工事で使用する単語の一例
- 土質試験・流用土・購入土・レキ質土・自然含水比・最適含水比・最大乾燥密度・コーン指数・試験施工(試験盛土)・まきだし厚さ・転圧回数・品質管理基準及び規格値・土の含水比試験・現場密度試験・突砂法・最大乾燥密度の90%以上・締固め度
盛土工事で使用する単語は他にもありますが、これらは適切な品質を確保した盛土を施工するためには必ず使用する単語です。
わからない単語が結構ある…。
わからない単語があっても大丈夫です。
なぜなら、この記事でわからない単語が理解できて、適切な品質を確保した盛土の施工管理ができるようになるからです。
本記事を読むことのメリットは、以下の通りです。
- 河川土工における築堤盛土でやるべき施工管理がわかる
- 施工計画を作るときに参考文献から調べる手間が省ける(参考文献の1つ、河川土工マニュアルは全587ページ)
- 短時間で築堤盛土が理解でき、早く帰宅できる
築堤盛土の施工管理をよくわからないまま施工すると、品質管理に必要な土質試験をやってなかったり、仕様書で定めの試験実施頻度に足りなかったりする可能性があるよ。
発注者の求める品質管理基準や規格値に不足があると、当然評価も下がり、工事成績評定点に影響が出ます。
本記事は、築堤盛土における品質管理の要点を絞り、これだけやっておけば発注者の求める築堤盛土の品質を確保できる、という内容になっています。
この記事は国土技術センター「河川土工マニュアル」と、国交省で盛土工を含む河川工事を9件経験した、当サイト運営者の経験に基づいて作成しています。
当サイト『ゲンプラ』の運営者:ランメイシ
現場監督と家庭(プライベート)の両立を応援するために、土木工事の施工管理をやっている現役の現場監督(歴16年)が当サイトを運営。施工管理業務の悩みに全力でサポートします!ご安全に!
保有資格:1級土木施工管理技士、河川点検士
主な工事経験:河川の築堤・護岸工事、道路工事、橋梁下部工事
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築堤盛土工事の流れ
河川土工の築堤盛土工事は、以下の流れで進めます。
- 【施工前準備(材料)】盛土材料の土質試験
- 【施工前準備(施工)】試験施工(試験盛土とも呼ぶ)
- 【本施工】土砂敷き均し・締固め
- 【品質管理】現場密度試験
- ③【本施工】と④【品質管理】を盛土1,000m3ごとに繰り返し
上記の内容は、標準的な施工の流れです。
本記事の内容は、④【品質管理】現場密度の試験方法が『突砂法』の場合で解説しています。
『RI計器』や『TS・GNSS』による試験方法では、規格値や試験時期・頻度が変わるので注意してください。
【施工前準備(材料)】盛土材料の土質試験
盛土を施工するための材料(土砂)採取地でサンプルを採取し、使用する土砂が築堤盛土材として適しているかを確かめるために土質試験を行います。
土砂が築堤盛土材料として適しているかは、以下の試験により判定します。
- 土の締固め試験
- 土の粒度試験
- 土粒子の密度試験
- 土の含水比試験
ポイントブロックタイトル
購入土の場合、土質試験した土砂と現場に運ばれてくる土砂の土質が違うというトラブルを防ぐ方法
購入土の場合、切り崩した山の土砂だと、切り崩した場所の地層によって土質が変わります。
そのため、販売先業者に予定の土量を伝えて、どの部分の地山の土砂を使用するか確認しておけば、現場に運んできたときに「想定していた土質と違う!」といったトラブルの防止になります。
土砂の販売業者が出す試験成績表と盛土施工に使う土砂の土質が違うことってあるの?
試験成績表の試料採取した土砂は黒っぽい色だったのに、盛土施工のときに搬入されてきた土砂が茶色とかだったら、明らかに土質が違うよね。
土質試験結果で確認しておくことは、材料が『築堤盛土材としての適性』と『含水比』
資料を採取した土砂の土質試験結果が出たら、内容を確認してみましょう。
土質試験の結果が出たんだけど、絶乾密度とか土粒子の密度とか、いろんな数値が書いてあるんだけど、これをどう施工に反映させればいいの?
全部覚える必要はないよ。盛土を施工するために、把握しておくべき項目を説明するね。
土質試験結果から、採取した土砂が築堤盛土材料として適していることを確認したら、施工のために以下の項目を把握しておきましょう。
- 土砂が築堤盛土材として適しているか
- 最適含水比(最大乾燥密度)は何%か、施工含水比は何%~何%の範囲か
【施工前準備(施工)】試験施工(試験盛土)
試験施工(試験盛土)とは、本施工を始める前に行う試験のことです。
試験施工って何のためにやるの?
築堤盛土の品質で重要なことは2つあり、試験施工はこの2つを本施工でクリアするための準備になります。
- 材料が均質に締固められていること
- 洪水および降雨による浸透水に対して安定であること
試験施工では、実際の施工方法で以下の4要素と締固め度との関係を確かめます。
- 締固め機械
- 一層のまき出し厚
- 締固め回数
- 施工中の土の含水比
試験施工を行うときの含水比は、自然含水比か本施工の時期に近い条件で行うのが良い
試験施工を行う際に土砂のは含水比は自然含水比が望ましいとされています。
ただし、実施工のタイミングが含水比の高くなりやすい冬期の場合、自然含水比より高めの状態で試験施工を行った方が、本施工と同等に近い条件になるため施工の確実性が増すというメリットがあります。
試験施工での品質管理は『材料試験』と『現場測定』
試験施工では、材料試験と現場測定を行います。
材料試験
材料の特性と締固め管理の基準値を知るために、土粒子の密度試験、含水量試験、礫のかさ比重および礫の吸水量試験、粒度試験、液性限界・塑性限界試験、締固め試験、コーン貫入試験などを行う。
現場測定
現場における測定項目とその測定頻度は以下の表を目安にしてください。
測定項目 | 測定時 |
現場密度 | まき出し後、転圧中に数回(たとえば締固め回数2、 4、6、8、10回の時)、転圧終了後 |
含水比 | まき出し後と転圧終了後(転圧中に測定する) |
表面沈下量 | 転圧終了後には必ず測定 できれば現場密度と同頻度 |
原位置強度 | 現場密度と同頻度 |
上の表は河川土工マニュアルに書いてある通りだけど、締固め回数が2回・4回・6回・8回・10回と5種類も試験をやるのは大変だから、以下を参考にしてね。
当サイト運営者も、これまで数十回と試験施工を行ってきましたが、レキ質土の場合、締固め回数(転圧回数)は4回・6回・8回の3種類で十分です。
- 2回転圧だと締固め度が90%以上を確保できたとしても、盛土の沈下が収束しないことが多く、工事完了後に沈下の可能性がある
- 10回転圧だと本施工で締固め作業に時間がかかるのと、過転圧になり路肩側に土砂が寄ってしまう可能性がある
レキ質土の場合、締固め機械の規格にもよるけど、4回~6回で締固めによる盛土の沈下も収束しているよ。
試験盛土のイメージ図は、河川土工マニュアルに記されている図を引用します。
盛土工事の試験施工について、もっと詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
【本施工】土砂敷き均し・締固め
試験施工で決定した『一層の敷き均し厚さ』と『転圧回数』に基づいて、築堤盛土の本施工を行います。
盛土はランマ―しか入らないような狭い所、つまり狭隘(きょうあい)部を除き、一層あたり30cmずつ盛土する必要があります。(土木工事共通仕様書より)
30cmずつ盛土を上げていく理由は、将来の盛土自体の圧縮沈下・不同沈下を防ぐためです。
試験施工の時と『違う機械』、『決定した厚さ以上の敷き均し厚さ』にならないよう注意しよう。
土砂敷き均し(まき出し)作業のポイント
盛土材の敷き均し(まき出し)作業のポイントは以下の通りです。
- 試験施工時と同じ機械を使う(ブルドーザ・バックホウなど)
- 試験施工で決定した『まき出し厚さ』で施工する
土質試験で、最大乾燥密度の90%以上を確保するための『施工含水比』がわかったけど、施工中はどうやって土の含水比を確認すればいいの?
現場で土の含水比を測定する方法として、おすすめは『電子レンジ法』です。
基本的に、土砂は毎日含水比が変化します。
そのため、盛土の施工日毎に盛土材料の含水比を電子レンジを使って測定し、施工含水比内であるかを確認する必要があります。
締固め(転圧)作業のポイント
試験施工で決定した『転圧機種』と『転圧回数』で、敷き均した土砂の締固めを行います。
盛土はランマ―しか入らないような狭い所、つまり狭隘(きょうあい)部を除き、一層あたり30cmずつ盛土する必要があります。
30cmずつ盛土を上げていく理由は、将来の盛土自体の圧縮沈下・不同沈下を防ぐためです。
盛土材の締固め作業のポイントは以下の通りです。
- 盛土全体を均等に締固める
- 盛土施工中は横断勾配に配慮して排水に注意する
盛土全体を均等に締固める
盛土端部や法肩などは締固めが不十分になりがちなので注意しましょう。
端部や法肩付近での転圧が難しい場合、締固め機械に1t級ハンドガイドローラーを使うのが有効です。
盛土の締固めには10t級タイヤローラーや4t級振動ローラーが主に使用されます。
このクラスの締固め機械での作業が難しいと思う部分があったら、ハンドガイドローラーも試験施工を行って転圧回数を決めておきます。
盛土施工中は横断勾配に配慮して排水に注意する
降雨が予測される場合は、盛土表面を平滑にして、雨水の滞水や浸透などが生じないようにします。
締固め機械は、盛土材料の土質・工種・工事規模などの施工条件と締固め機械の特性を考慮して選定しますが、特に土質条件が選定上の重要なポイントです。
締固め機械も機種によって締固め機能が多様で、同一の機種の場合でも規格、性能(大きさ・重量・線圧・タイヤ圧・振動数・起振力・衝撃力・走行性など)によって締固め効果が異なっています。
現場密度試験(締固め度が規格を満たしているか確認)
現場密度の試験方法を『突砂法』または『砂置換法』によって行う場合、品質管理の試験時期・頻度は以下の通りです。
- 築堤は、1,000m3に1回の割合、または堤体延長20mに3回の割合の内、測定頻度の高い方で実施する。
- 1回の試験につき3孔で測定し、3孔の『平均値』で判定を行う。
現場密度試験は1000m3に1回の割合、または堤体延長20mに3回【ただし特記仕様書の内容が優先】
延長20mに3回となると、200mの築堤だったら600回も現場密度試験をやるの!?
「わかってて受注したんでしょ?」って発注者に言われたらそれまでだけど、特記仕様書に『1,000m3に1回の割合で実施』って書いてあると思うよ。
例えば、国交省の工事の特記仕様書には、以下のように盛土の品質管理の試験基準について、『1,000m3に1回』と記載されています。
そうだんだ…ビックリしたよ。
当サイト運営者も、これまで国交省の河川工事を9件経験しましたが、盛土工の現場密度試験の頻度は『1,000m3に1回』と全ての工事の特記仕様書で記載されていました。
特記仕様書 > 土木工事共通仕様書 なので、特記仕様書に現場密度試験の頻度についての記載があれば、特記仕様書に従いましょう。
河川土工は3孔の『平均値』、道路土工は3孔の『最低値』で判定する
河川土工と道路土工で、現場密度試験の結果を判定方法が異なります。
- 河川土工は3孔の『平均値』
- 道路土工は3孔の『最低値』
河川と道路で違うんだね、共通仕様書をよく読んでないと気付かずに管理しちゃいそう。
まとめ
本記事では、築堤盛土における品質管理の要点を解説しました。
河川土工の築堤盛土工事は、以下の流れで進めます。
- 【施工前準備(材料)】盛土材料の土質試験
- 【施工前準備(施工)】試験施工(試験盛土とも呼ぶ)
- 【本施工】土砂敷き均し・締固め
- 【品質管理】現場密度試験
- ③【本施工】と④【品質管理】を盛土1,000m3ごとに繰り返し
上記の内容は、標準的な施工の流れです。
本記事の内容は、④【品質管理】現場密度の試験方法が『突砂法』の場合で解説しています。
『RI計器』や『TS・GNSS』による試験方法では、規格値や試験時期・頻度が変わるので注意してください。
盛土を施工するための材料(土砂)採取地でサンプルを採取し、使用する土砂が築堤盛土材として適しているかを確かめるために土質試験を行います。
土砂が築堤盛土材料として適しているかは、以下の試験により判定します。
- 土の締固め試験
- 土の粒度試験
- 土粒子の密度試験
- 土の含水比試験
試験施工では、実際の施工方法で以下の4要素と締固め度との関係を確かめます。
- 締固め機械
- 一層のまき出し厚
- 締固め回数
- 施工中の土の含水比
盛土材の敷き均し(まき出し)作業のポイントは以下の通りです。
- 試験施工時と同じ機械を使う(ブルドーザ・バックホウなど)
- 試験施工で決定した『まき出し厚さ』で施工する
盛土材の締固め作業のポイントは以下の通りです。
- 盛土全体を均等に締固める
- 盛土施工中は横断勾配に配慮して排水に注意する
現場密度の試験方法を『突砂法』または『砂置換法』によって行う場合、品質管理の試験時期・頻度は以下の通りです。
- 築堤は、1,000m3に1回の割合、または堤体延長20mに3回の割合の内、測定頻度の高い方で実施する。
- 1回の試験につき3孔で測定し、3孔の『平均値』で判定を行う。
河川の土工事で参考にするべきは国土技術センター『河川土工マニュアル』
施工計画は会社の過去工事を参考にしているけど、さらに品質の高い施工をするとしたら、何を参考にしたらいい?
河川の土工事では、国土技術センター『河川土工マニュアル』を参考に施工計画・施工管理をすると、発注者から高評価を受けやすいです。
「河川土工マニュアルに基づいて施工してくださいね」と、発注者から事前に言われることもあるよ。
さっそく河川土工マニュアルを見てみたんだけど、辞典みたいなボリュームで読む気が無くなっちゃったよ…。
河川土工マニュアルを印刷すると、以下のようになります。
河川土工マニュアルは全部で587ページ、両面印刷でも3cm程の厚さ。
そのうち、施工編(第4章)は124ページ、管理編(第5章)は49ページと、内容を絞っても、この量に目を通して施工計画に反映するのは大変です。
本記事では河川土工マニュアルの他、さまざまな書籍と当サイト運営者の経験から、盛土工事を適切に施工するための施工管理についてまとめています。
仕様書以上の品質を確保した施工管理には何をやればいいか、この記事を読めばわかるようになってるよ。
この記事を読んで、もっと深い知識をつけたいと興味を持ったら、河川土工マニュアルや土工に関する書籍を読んでみてくださいね。
ちなみに国土技術センターで配布されている河川土工マニュアルのPDFデータは、文章をコピーすることも可能!
とても便利なので、パソコンなどにPDFデータで保存するのがおすすめです。
例えば以下のようにコピーしたい範囲をドラッグしながら選択して…
Excelなどに貼り付け。手入力せずに済みます。
紙も見やすいけど、国土技術センターで配布されているPDFデータなら「ctrl」+「F」で文字検索もできて便利だよ。
工事に関する参考文献を紙よりもデータ(PDF)で管理したほうが良い理由については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてくださいね。
施工管理の知識を身に付ければ仕事はラクになる
施工管理の仕事は、知識を身に付ければ悩むことも少なくなります。
当サイトは施工管理で苦労しないため、現場監督に役立つ情報を発信しています。
しかし、施工管理だけでなく安全管理も重要な仕事です。
現場で事故が起きたら、本当に最悪です。
- 「事故速報」を発注者に20分以内など、直ちに提出する
- 原因など、安全管理に問題が無かったか、追及される
- ケガ人が出れば、現場で働く人以外に、ケガ人の家族も悲しむことになる
- 事故報告書を作成し、発注者に提出する
- 事故の内容や発生状況の写真や図を作成
- 事故原因と再発防止対策を現場または社内で検討して作成
- 施工計画書から、事故に関係する施工内容を添付
- 事故に関係する業者の契約書、施工体制台帳の写しを添付
- 事故当日の安全巡視日報の写しを添付
- 事故発生日の危険予知(KY)活動日報の写しを添付
- 事故発生日の作業日報の写しを添付
- 事故に関係する作業手順書の写しを添付
- 災害防止協議会の議事録写しを添付
- 安全教育・訓練の実施内容写しを添付
日頃から安全管理を徹底して、現場も書類も不備が無ければ、事故のリスクは少なくできるでしょう。
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